「一人暮らしを続けるのが心配」「階段の上り下りが大変そう」「建物も古くなってきたので、もう少し安心して暮らせる家に引っ越してほしい」。

そう思っていても、高齢の親に住み替えの話を切り出すのは簡単ではありません。

子どもから見れば心配な住まいでも、親にとっては長年暮らしてきた大切な生活の場所です。いきなり「もう危ないから引っ越した方がいい」と結論を伝えると、反発されたり、話そのものを避けられたりすることもあります。

大切なのは、最初から引っ越しを説得しようとするのではなく、まず親が今の暮らしをどう感じているのかを聞くことです。

そのうえで、現在困っていることと、これからの暮らしで大切にしたいことを一緒に整理していきましょう。

まずは「今の家で困っていること」を聞く

家族が高齢の親の住み替えを考えるきっかけには、さまざまなものがあります。

階段が大変になった、買い物や通院に時間がかかる、建物の老朽化が気になる、一人暮らしで何かあったときが心配など、離れて暮らす家族だからこそ気になることもあるでしょう。

しかし、親本人が同じように感じているとは限りません。

住み慣れた地域には、行きつけのお店や病院、近所付き合い、散歩道など、長い時間をかけて築いてきた生活があります。家族が考える「便利な住まい」が、本人にとっても暮らしやすいとは限りません。

最初は「引っ越してほしい」と伝えるより、「今の家で大変になってきたことはない?」と現在の生活について聞くところから始めてみましょう。

「高齢だから」ではなく、心配している理由を伝える

住み替えについて話すときは、「もう高齢だから」「年齢的に心配だから」だけを理由にしないことも大切です。

「階段で転ばないか心配している」「最近、買い物に行くのが大変そうに見える」「建物が古くなってきたので、この先も住み続けられるか一度考えておきたい」など、家族が何を心配しているのかを具体的に伝える方が話し合いやすくなります。

一方で、家族が心配しているからといって、その場ですぐに引っ越しを決める必要はありません。

今の住まいで困っていることを整理した結果、「今すぐ住み替えなくてもよい」という結論になることもあります。

引っ越すか、引っ越さないか。その二択から始めるのではなく、これからも安心して暮らしていくために、住まいについて一度考えてみる。そのくらいのところから始めてもよいでしょう。

親が「変えたくないもの」を確認する

住み替えを考えることになったら、次に確認したいのが、親本人が現在の生活で大切にしているものです。

「今の病院には通い続けたい」「友人が近くにいる」「この商店街を利用したい」「できれば同じ地域で暮らしたい」など、人によって譲れない条件は違います。

高齢者の住まい探しでは、家賃や間取りだけではなく、現在の生活をできるだけ維持できるかという視点も大切です。

一方、希望する駅や徒歩分数などを細かく限定すると、候補となる賃貸住宅が少なくなることがあります。すべてを変えるのではなく、「病院へ通える範囲は残す」「隣駅までなら検討する」など、生活上変えたくない条件と、少し調整できる条件を分けて考えてみましょう。

生活圏を大きく変えずに探す範囲を調整する方法については、高齢者の住まい探しでエリアを広げると選択肢はどれくらい変わる?で詳しく紹介しています。

家族だけで物件を決めてしまわない

親のことを心配するあまり、子どもが先に物件を探して「この部屋なら安心だから、ここにしよう」と話を進めたくなることもあると思います。

しかし、実際にそこで毎日生活するのは親本人です。

家賃や間取りだけでなく、階段やエレベーター、買い物、通院、周辺環境など、本人が無理なく生活できるかを確認しながら探す必要があります。

また、高齢者の賃貸住宅探しでは、希望条件に合う物件がインターネットで見つかっても、実際に高齢の方の入居について相談できるとは限りません。年齢や収入、保証会社、緊急連絡先など、申込者の状況と物件側の条件を確認しながら進めることになります。居住支援法人シニアライフパートナー

だからこそ、家族だけで理想の物件を先に決めるのではなく、本人にとって大切な条件を整理したうえで、実際に入居について相談できる住まいを探していくことが大切です。

実際の住み替えでも、家族と一緒に条件を整理しています

シニアライフパートナーで対応したケースでは、40代の娘様から、70・80代のご両親と一緒に暮らす新しい住まいについて相談をいただきました。

お父様が車いすを利用されていたため段差の少なさが重要で、さらに3人で暮らせる広さ、エリア、将来的なペット飼育など複数の希望がありました。

途中で審査が難しい結果になったり、内覧前に募集が終了したりすることもありましたが、何を大切にするのか、どこなら条件を広げられるのかをご家族と整理しながら住まい探しを進め、最終的に住み替えにつながっています。居住支援法人シニアライフパートナー

実際の経緯は、娘様と70・80代のご両親が一緒に進めた住み替えの相談事例で紹介しています。

「今すぐ決めなくてもいい」と伝える

親に住み替えについて考えてもらうためには、急いで結論を求めないことも大切です。

「一度どんな物件があるか見てみよう」「今の家と比べてみよう」「家賃がどのくらいになるのか調べてみよう」というところから始めても構いません。

高齢者の部屋探しでは、希望する賃貸住宅が見つかっても、入居について相談できるか確認しながら進める必要があります。そのため、住み替えが必要になってから慌てて探すより、時間に余裕がある段階で話し始めた方が、本人も家族も選択肢を整理しやすくなります。

「引っ越すことを決めてから探す」のではなく、「今後必要になったときのために、どんな住まいがあるのか知っておく」という考え方でもよいでしょう。

家族だけで話が進まないときは第三者へ相談する

親子だからこそ、住まいの話が感情的になってしまうこともあります。

家族は「心配だから言っている」のに、親は「今の生活を否定された」と感じてしまう。反対に、本人の希望を尊重するあまり、家族が不安を抱えたままになることもあります。

そのような場合は、家族だけで結論を出そうとせず、不動産会社や居住支援法人、地域包括支援センター、ケアマネジャーなど、状況に応じて第三者へ相談する方法もあります。

シニアライフパートナーでも、高齢者ご本人だけでなく、親御様の住まいを心配されているご家族からの相談を受けています。

「まだ本人に引っ越す意思がない」「住み替えが必要かどうかも分からない」という段階でも、まず現在の住まいや生活で何が心配なのかを整理することから始められます。

まとめ

高齢の親に「引っ越してほしい」と伝えるときは、最初から引っ越しを説得しようとしないことが大切です。

まず、今の暮らしで困っていることを聞く。家族が何を心配しているのかを具体的に伝える。そして、親本人が今の生活で変えたくないことや、これからどのように暮らしたいのかを一緒に整理する。

その結果、すぐには引っ越さないという選択になることもあります。それでも、早い段階で住まいについて話し合っておけば、将来住み替えが必要になったときの準備につながります。

高齢者の住まい探しは、「どこへ引っ越すか」を決めるだけではなく、「これからどんな暮らしを続けたいか」を親子で考えることから始まります。

「親に住み替えを勧めたいけれど、どう話せばよいか分からない」「本人の希望と家族の心配をどう整理すればよいか迷っている」という段階で、すべてを決めておく必要はありません。

シニアライフパートナーでは、高齢者ご本人はもちろん、親御様の住まいについて心配されているご家族からのご相談にも対応しています。

現在の暮らしや本人の希望、ご家族が心配していることを伺いながら、住み替えが必要になった場合にどのような住まい探しができるのか、一緒に整理していきます。