「賃貸住宅で一人暮らしをしている親が認知症になったら、退去しなければいけないの?」

高齢の親御様について、このような心配をされるご家族もいらっしゃると思います。

結論からいうと、入居中に認知症になったというだけで、それまでの賃貸借契約が自動的に終了するわけではありません。

ただし、認知症の症状や判断能力の状態は人によって異なります。これまで通り生活できる場合もあれば、家賃の支払い、契約更新、管理会社とのやり取りなどを一人で行うことが難しくなる場合もあります。

大切なのは「認知症になったら住めなくなる」と考えることではなく、今の住まいで生活を続けるために何が必要なのかを早めに整理することです。

認知症になっただけで賃貸契約が終わるわけではない

まず知っておきたいのは、「認知症と診断されたこと」と「賃貸住宅に住み続けられるか」は分けて考える必要があるということです。

認知症になったという事実だけを理由に、当然に現在の賃貸借契約が終了するわけではありません。賃貸住宅の更新についても、一般的な普通借家契約では、貸主が更新を拒絶する場合には正当事由が必要とされています。

一方で、実際の暮らしの中では別の問題が出てくることがあります。

例えば、家賃の支払いができているか、火の元や鍵の管理に不安がないか、管理会社からの連絡内容を理解できているかなどです。

つまり問題になるのは、診断名そのものというより、現在の生活状況と賃貸住宅での暮らしをどのように支えていくかです。

契約より先に「今の暮らし」を確認する

ご家族が認知症と診断されると、賃貸契約を心配して「このまま住んでいて大丈夫だろうか」と考えるかもしれません。

しかし、まず確認したいのは日々の暮らしです。

家賃や公共料金をこれまで通り支払えているか。郵便物を確認できているか。ゴミ出しや室内の管理に大きな問題がないか。困ったときに連絡できる家族や支援者がいるか。

一人暮らしの場合は、管理会社や大家さんが本人と連絡を取れなくなったときの連絡先も重要になります。

高齢者の住まい探しで緊急連絡先がどのような役割を持つのかについては、「緊急連絡先の重要性」でも詳しく紹介しています。

認知症の症状が軽いうちから、ご本人の希望を確認しながら「困ったときに誰へ連絡するか」「誰が生活を支えるか」を整理しておくことが大切です。

契約更新などの手続きが難しくなる場合もある

注意したいのは、認知症が進行し、本人が契約内容を理解して判断することが難しくなった場合です。

認知症だから一律に契約ができないわけではありません。判断能力は一律ではなく、その人の状態や行う法律行為によっても検討する必要があります。

ただ、賃貸借契約の更新や変更、住み替えのための新たな契約などで本人による法律行為が難しくなれば、家族だけで対応できないこともあります。

こうした場合に本人の権利や財産を守る仕組みの一つが成年後見制度です。法定後見には本人の判断能力に応じて後見・保佐・補助があり、家庭裁判所が成年後見人等を選任します。

ただし、**「認知症になったら成年後見制度を利用する」と機械的に考える必要はありません。**必要性がある場合には、地域包括支援センターなど専門的な相談先につなぐことも選択肢です。国土交通省も、判断能力に懸念がある場合の相談先として地域包括支援センター等を案内しています。

管理会社に伝えるべきか迷ったときは

「認知症になったことを管理会社へ伝えたら、退去を求められるのでは」と不安になる方もいるでしょう。

どのような情報を共有する必要があるかは、本人の状態や契約内容、実際に起きている問題によって異なります。

ただ、管理会社からの連絡に対応できなくなっている、家賃の支払いに支障が出ている、生活上のトラブルが起きているといった場合に、家族だけで問題を抱え続けることはおすすめできません。

反対に、生活上の問題が起きていない段階から「認知症だから住み替えなければ」と急いで結論を出す必要もありません。

まずは本人が今の住まいでどのように暮らしているのかを確認し、必要な支援を一つずつ考えていきましょう。

今の家で難しくなったら「次の住まい」も早めに考える

支援体制を整えても、階段の上り下りが難しくなったり、室内の段差が負担になったりして、現在の住宅が身体状況に合わなくなることもあります。

その場合は、認知症だけを理由にするのではなく、これからの生活全体を考えて住み替えを検討することになります。

高齢者の住み替えでは、家賃やエリアだけでなく、エレベーター、段差、生活動線、家族との距離なども重要です。

実際にシニアライフパートナーでも、車いすを利用するお父様を含むご家族の住み替えで、段差やエレベーターなどを確認しながら住まいを探したケースがあります。身体状況を踏まえて住まいの条件を整理した実際のご相談事例も参考にしてください。

家族だけで判断しにくいときは相談先を分けて考える

認知症と住まいの問題は、不動産だけですべて解決できるものではありません。

現在の生活や介護については地域包括支援センターやケアマネジャー、法律行為や成年後見制度については必要に応じて専門機関、賃貸住宅や住み替えについては不動産会社や居住支援法人など、相談内容によって適切な窓口は異なります。

特に高齢者の住まいでは、住宅と生活を切り離さずに考えることが重要です。

まとめ

入居中に認知症になっても、認知症になったというだけで賃貸借契約が自動的に終了するわけではありません。

まず確認したいのは、今の住宅で生活を続けるうえで困っていることがあるかどうかです。

本人の判断能力が低下して契約手続きなどが難しくなれば、成年後見制度を含めた支援を検討する場合もあります。一方、住宅そのものが生活に合わなくなれば、住み替えを考えることもあります。

「認知症だから退去」と考えるのではなく、今の暮らしを続けるために何が必要なのか、これからどのような住まいが合っているのかを本人の希望も大切にしながら考えていきましょう。

「親が今の賃貸住宅で暮らし続けられるか心配」「今後のことを考えて住み替えも検討したい」という場合は、問題が大きくなってからではなく、早めに住まいについて整理しておく方法もあります。

シニアライフパートナーでは、高齢者ご本人やご家族から、現在の住まいについてのお悩みや、これからの住まい探しについてご相談をお受けしています。

介護・福祉や法律について専門的な判断が必要な場合には、それぞれ適切な専門機関へ相談しながら、住まいについてできることを一緒に考えていきます。